新型コロナウイルスの感染拡大に伴うアメリカ全土の失業保険の申請件数が高い水準で推移しています。深刻な雇用環境の悪化で、非常事態が宣言された2020年3月中旬以降の申請件数は3300万件を超えました。さらに世界中では、33億人が職場の全面的または一部閉鎖に直面しています。
一方、日本でも少しずつ経済の悪化による影響が現れ、今後拡大する可能性があります。
そこで過去20年ぐらいのお金の供給を振り返ると、ある一定の法則が見えてきます。
短期的な影響
お金の供給を増やして消費を刺激する
一律10万円の給付金などが最たる例です。
また日銀は5月7日、金融機関からの国債買い入れなどで市中に供給しているお金の総額が2020年4月末時点で、前年同月比2・8%増の529兆1539億円だったと発表しています。
日銀が3月に決定した上場投資信託(ETF)の購入増などの追加緩和が影響しているそうです。
このような行為は英語で「monetary injections」と表現されます。
まさに、お金の注射です。パッと見効果がありそうだが、それは一時的のことが多いです。
需要の増加にともない製品やサービスの価格を上げる
マスクを例に取り上げてみましょう。
通常ドラッグストアなどでは、50枚入り1箱が500円前後で売られていました。
しかし、今年の4月ごろは3000~5000円ぐらいの価格で推移していました。
仕入価格の高騰から1箱500円まで戻すことが困難な状況でしょう。
しかし、5月の中旬頃か twitterでは、マスク値崩れ がトレンド入りしていました。
新型コロナウイルスの第二波や第三波に備えて、備蓄する業者も増え、国産メーカーの製造にともない価格の急激な下落はないかもしれません。
一般的に輸入に頼らず、国内生産で対応しようとすると価格は上昇する傾向にあります。
雇用の増加にともない失業率が低下する
今現在は雇用の増加はむづかしいでしょう。
減税措置や公共事業の増加によって、雇用の増加が見込まれる業種もあるかもしれません。
また人手が足りない医療や介護の業界に、転職する方も増えるかもしれません。
すると、失業率は低下する可能性が高いでしょう。
長期的な影響
ここからが大事なポイントです。
こちらのグラフを使って影響を見てみましょう。
iPadで作成した手書きのグラフなので、若干線が歪んでいますが、お許しを。
横軸は、お金の供給量(Quantity of Money)です。
左の縦軸は、お金の価値(Value of Money)です。
右の縦軸は、価格水準(Price Level)です。
お金の供給カーブ(Money Supply)は、垂直です。
理由は、政府によって決められているからです。
需要曲線は、下向きのスロープだ。。お金の価値が下がり、価格が高くなると、人々はよりたくさんお金を欲しがります。
そして、お金の需要と供給のバランスがとれた点(equilibrium)をAとします。
では、お金の供給量をふやすとどうなるの?
次にこちらのグラフを使って何が起きるか順に見てみましょう。
- お金の供給を増やすと、M1からM2にシフトします。
- お金の価値が1/2から1/4に下がります。
- 価格レベルが2から4に上がります。 そして、AからBに需要と供給のバランスがとれた点が移動します。
つまり、お金の供給量を増やすと、価格が上昇し、お金の価値が下がります。
参考までに、日銀が提供するマネタリーベースの時系列データを見てみましょう。
マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことです。
具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計値です。
マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」
日本銀行当座預金とは、日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金のことです。
まとめ
一時的に、マンション価格が下落することもあるでしょう。
しかし、新型コロナが収束したあと都市部のマンション価格は上昇すると予想されます。(多分)
なぜかというと、短期的に雇用の増加やお金の供給を増やすことによって、長期的にはお金の価値を下げ、価格を上げるからです。
または、面積を小さくして価格を据え置きにする傾向になるかもしれません。
リーマンショック後の価格の推移を思い出してください。
新築マンションの価格は上昇し、面積も縮小している傾向にあります。
追記(2021年10月5日):
2021年10月4日に日銀が発表した9月のマネタリーベースの平均残高は前年比11.7%増の655兆7964億円となりました。
また1年半前にマンション価格の上昇を予測しましたが、実際の結果はどうでしょうか。
不動産経済研究所発表の「首都圏新築マンション市場動向 2021年8月」によれば、発売戸数は1,940戸、前年同月比16.2%増。2カ月ぶりの増加となり、 平均価格は7,452万円、㎡単価は117.8万円といずれも大幅に上昇しました。
前年同月比では平均価格は1,441万円(24.0%)のアップ、㎡単価は24.5万円(26.3%)のアップとなり、大幅な上昇が見られました。
つまり、1年半前の予想がみごと的中したことが確認できます。
追記(2022年6月16日):
日銀が5月6日に発表した2022年4月のマニタリーベースの平均残高は前年比6.6%増の687兆4736円となったそうです。
大規模金融緩和で残高は過去最高を更新したそうです。
ここで、再度おさらいです。
お金の供給量を増やすと、価格が上昇し、お金の価値が下がります。
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